遥か、もち巾着。

もしもって思ったら何かが変わるわけでもないし

薔薇も百合も鳩も太陽も(院試日記Ⅱ 3日目)

去る秋のこと、新国立劇場の舞台の演目に『レオポルトシュタット』なる作品を見つけた。世紀末から第二次世界大戦後までのウィーンのあるユダヤ人一家を描いた芝居、ということで大変興味をそそられた。日程が合えば観てみたかったのだが、あいにく東京行きの日程が合わずそれは叶わなかった。

昨日、同作品がロンドン・ナショナルシアターで上演された際の収録が京都と神戸で明日まで上演されていることを知った。ちょうど京近美で開催されているルートヴィヒ美術館展にも行こうと思っていたことだし、その前に『レオポルトシュタット』を見ていくことにした。

総じて言うと、自分自身がウィーンの歴史と文化に興味があり、ヨーゼフ・ロートの作品を人並みに好んで読んでおり、加えて(指導教授のお陰で)ユダヤ教の伝統を多少知っていたため、そういう意味でかなり楽しめた一方、最終的にとてつもなく重いテーマを扱っているために恐ろしくなってしまうような作品だった。

印象に残ったシーンをいくつか書いていこうと思ったのだが、予想以上に長くなってしまいそうでとても今まとめるのは無理なので、また別の機会に書いてみようと思う。

でもちょっと名残惜しいので(?)ひとつ、一番「ゾッとした」シーンだけ書いておこう。1938年、クリスタルナハトの最中のウィーンで登場人物の1人がピアノでハイドンの「皇帝讃歌」を弾く。それはもう消えて無くなってしまったハプスブルク君主国の国歌だった旋律だが、今ではオーストリアを併合し現在進行形でユダヤ人を弾圧しているドイツの国歌なのである。その後、同様の旨のセリフもあるのだが、この旋律が聴こえた時は背筋が凍るような心地がした。

 

とにかく、上演最終日に駆け込んで見てよかったと思える作品だった。いつか生の舞台で見てみたいものである。

 

今日の記録

『独文解釈の研究』第21〜27課、計3h程度。