世の中にあんまり文学研究科の院試体験記ってないなあ、と思ったので記録しておきます。半分は自己顕示欲の塊みたいなもんですが、半分は不安に駆られて「文学部 院試 勉強」などと検索した人を想定して書いています(自分がそうだった)。ちなみに専門分野は西洋美術史です。
ドイツ語
弊学の場合、西洋美術史を受験する際は独仏伊西露のどれかが必須です(英語は分野別の試験に内包)。大学院入試では例年数行程度の独文和訳が3題出されています。
当方、第2外国語として1、2回生の頃に週3回ドイツ語の講義を受けていたはずなのに成績は芳しくなかった上にすっかり忘れていたのでほぼ初歩からやり直しました。
まず3月下旬頃から基礎文法を『しっかり身につくドイツ語トレーニングブック』(ベレ出版)でさらい直しました。
CD BOOK しっかり身につくドイツ語トレーニングブック (CD BOOK―Basic Language Learning Series)
- 作者:森 泉
- 発売日: 2006/04/01
- メディア: 単行本
怠惰な学生なので2ヶ月程かけてやっと1周しました。問題数が多いため多少根気は必要ですが、量をこなす事で文法がいやでも定着していくので初心者には有難かったです。
その後は試験内容を意識して『独文解釈の秘訣Ⅰ,Ⅱ』(郁文堂)を使って短めの文章の和訳に取り組みました。
1970-80年代の大学入試からの抜粋なので時代を感じますが(東京教育大がまだある)、他に独文解釈の良さげな参考書が分からなかったので選択しました。訳はこなれすぎてますが訳出のコツやフレーズが纏まっているのは助かりました。まずはドイツ語を書き写して辞書を引きながら丁寧に1周し、その後3題1時間を辞書なしで解くことで演習形式としました。
単語は文章で読む中で覚えたいものですしその方が覚えてることが多いですが、偏りや穴があると怖いので単語帳も……ということで『新独検合格 単語+熟語1800』(第三書房)もパラパラ読んでいました。
日本語が隠せないのが難点なので赤シートを使えるように緑ペンで塗りつぶしました。大学院入試問題とはいえ基礎的な単語が殆どなので実際役に立ちました。
また、文章を読む際は『クラウン独和辞典』(三省堂)を何回も引きました。
マーカーで引いた単語をもう一度引き直すこともしばしば。すぐ覚えろよって話ですが……
また大学で開講されていたドイツ語講読演習やTwitterのフォロワーさんに毎週おこなっていただいたドイツ語勉強会によって日常的にドイツ語に触れる機会があったのはとても有難いことでした。
専門問題
西洋美術史
これができなきゃお話になりませんから。例年専門問題は芸術学ブロックで共通の記述問題(諸芸術学分野から単語が6つ出題され、そのうち3つを選んで解答する)と西洋美術史独自の英文和訳の2題が課されるA問題と東西美術史で共通の記述問題(東西美術史から8つ単語が出題され、そのうち6つを選んで解答)と画像問題(画像の美術作品の制作年代、制作地、制作者を検討するのが基本)が出題されるB問題が課されていました(今年は試験時間が短縮され、A・B問題が統合されていた)。
西洋美術史の基礎知識は大学で開講されていた講義で大まかに身についている筈とはいえ、それ以上に広く深く知っている必要があるため、『西洋美術館』(小学館)で復習しました。
まずノートを取りながら1周、次に大事な人物名と用語を200字でまとめながらまた1周、最後に軽くもう1周……という感じで勉強しました。見開きで1つのテーマを扱っているので分かりやすいですし、画像も多く読みやすい本だと思います。また2周目に人物・用語をまとめた際は適宜インターネットで検索をかけて参照しました。
『西洋美術館』はとても参考になるのですが所謂「現代アート」についての記述は少々古めなので『現代アート事典』(美術出版社)でカバーしました。
ちょっと俗すぎる傾向はありますが、現代アートの主潮流が易しくまとめてあり参考になりました。
また美術史史と関連する思想史については『20世紀の美術と思想』(美術出版社)と『芸術学ハンドブック』(勁草書房)を使って押さえました。
前者の美術史家・思想家の項目は重要人物がほぼ網羅されています。後者は美学/美術史の歴史、絵画の基礎知識、時代区分などの根本が貫かれた本で特に19〜20世紀の美術史家を整理するのに便利でした。
また息抜きがてら『モチーフで読む美術史』(筑摩書房)や『ルネサンスの世渡り術』(芸術新聞社)を読んだり、画家・美術史家のウィキペディアを読んだりしていました。
ウィキペディアは鵜呑みにはできませんが、「マネとモネは面識がない頃混同され、マネは自分を貶めようとしている奴がいると思い込んだ」とか「『ピーナッツ』にてスヌーピーの家がクリストに梱包されるエピソードを受けて、本当に《梱包されたスヌーピーの家》が制作された」とかちょっとしたエピソードが記憶に残り、そこから芋蔓式に基礎知識も覚えられるため意外と役に立ちました。
画像問題については日頃からよく作品を見ることと多くの作品に触れることが大事かな、と思います。
英語
英語問題は美術史やそれに関わる領域の文章からの抜粋のため、問題集や参考書に頼るよりも過去問を解くのがベストだと思います。あとは『速読英単語』(Z会出版)を読み返したくらいですね……
西洋美術史以外の芸術学に関しては日本美術史と美学の概説書を読んで対策としていました。まあ本番では活かせなかったのですが……
とまあ、こんな感じで勉強していました。勉強の質も量も十分だったとは言えないですし、ぐうたらしている時間も結構多かったので正直なんとか間に合った、といったところです。ちなみに面接で筆記試験の点数がもう出ていたのですが、ドイツ語は選択者の中では1番できていたらしいです。嘘だろ。
ひとまず院試関係はここで終わりです。卒論頑張ります。