遥か、もち巾着。

もしもって思ったら何かが変わるわけでもないし

2022-10-01から1ヶ月間の記事一覧

Muss es sein?(修論日記 15-16日目)

土曜日に、知人の誘いでミラン・クンデラの研究会に参加した。参加、と言っても僕はただの読者に過ぎないので、研究者の方々の話を只管に聞いていただけではあるが。 さて、クンデラという小説家を好きか、という問いに誠実に答えるのは、僕にとっては難しい…

夜のいちばん高いところ(修論日記 11-14日目)

阪急梅田駅は、終電が近づくと『第三の男』のテーマが流れる。かくいう私は当の映画を観たことはなく、小説版を読んだことがあるのみである。だから、この作品に対して私が抱く視覚的イメージは、全て私の想像の産物だ。それでも終戦間もない荒んだ空気のウ…

大きな服に慣れていく(修論日記 9-10日目)

朝、窓を開けると金木犀の香りがした。天気は雨。雨がその芳香を運んできたかのようだ。 僕は愚かだった。外に洗濯物を干すことができないのに洗濯機を回し始めてしまった。それだけで気持ちが沈む。 せっかく早起きができたのに、そんなことで凹んでしまい…

青春(修論日記 7-8日目)

大阪・福島はザ・シンフォニーホール。普段は開演時間までに暇を潰すための文庫本が鞄の中にぶち込まれているものなのだが、今日に限ってそれが無い。仕方なく、ファイルに入れてあったホチキスで留められた10枚ほどの紙束を眺める。独文の演習で読むツヴァ…

情報の渦に対峙する(修論日記 6日目)

高校生の頃、バーンスタインの『キャンディード』序曲を演奏したことがある。楽曲の後半、楽器群ごとに拍子が入り乱れ、それぞれがそれぞれのフレーズを反復し、どんどん混沌としていく箇所がある。タクトを執っていた顧問は、それを「証券取引所のテロップ…

考える暇を与えない(修論日記3-5日目)

忙しい三日間だった。月曜日は夜行バスで小倉から帰投した後にオーケストラの練習。火曜日はゼミのあとアルバイトを挟んで研究室で飲み会。水曜日は楽器のレッスン。短い間にタスクを詰め込むと破綻しそうになるが、そうしないと結局何もやらない人間になっ…

まだ生きている(修論日記 2日目)

ことしの「あいち2022」では河原温の作品《I Am Still Alive》が象徴的に用いられている。この作品をはじめ、河原温は単純な「記録」を表現手段とした作品を多く残している。それと多少は関係するのだろう、今回の「あいち2022」には「記憶」を作品の重要な…

哲学的意味(修論日記 1日目)

先日、《プリペアド・ピアノのためのソナタとインターリュード》を実演で聴いた。ケージの代表作と言っていい作品だ。静かなコンサートホール、ピアニストとピアノに向けられたスポット以外が落とされた暗い空間、その中に響く風変わりなピアノの音。どこか…

果てしなき、と言うほどでもない逃走(修論日記 0日目)

学部の後輩が院試に合格したらしい。 つまり、ぼくが院試に合格してから2年が経過したことになる。この2年間でろくに学術的発展に寄与していないのは今までも愚痴混じりに書いてきた通りである。修士課程2年、秋。やるべきことは何かと問われれば修士論文執…