遥か、もち巾着。

もしもって思ったら何かが変わるわけでもないし

春は静かに

およそ一週間ぶりに外に出た。たった一週間、それも比較的自由のきく環境だというのに外出しないだけでここまで心に負担が来るのか、と驚かされた。ちょっとした外出自粛でこれなのだから多分ぼくは潜水艦に乗せられたらすぐに発狂するだろう。『Uボート』というドイツ映画の、あの狭く不衛生な艦内を思い出して思わずぞっとした。

 

気づけば桜も見頃を過ぎてしまった。家のすぐそばを走る阪急電車のマルーンと桜のコントラストはなかなか見事なもので、毎年楽しみにしていたのであるが。思えばもうここひと月電車に乗っていない。普段なら毎週梅田に行っていたのに。

 

春だというのに道ゆく人は少なく、小学校も静かだ。今年の春は本当に静かだ。何だかこのまま時が流れて人間だけが消えてしまうような気がした。

またいつか眠たい目を擦りながら講義を受けたり、研究室で文献を漁ったり、友人と話をしたり、オーケストラを聴きに行ったり、お気に入りの喫茶店でコーヒーを飲んだりする為に、今は耐えなければならないのだろう。せめて、日常が戻ってくる希望だけでも持てたらよいのだが。